101016未来ビジョン『藻で日本が産油国になる?!注目のバイオ燃料!』1/2

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生産能力10倍 「石油」つくる藻類、日本で有望株発見

2010年12月15日7時0分

写真:藻類「オーランチオキトリウム」の沖縄株=筑波大提供
藻類「オーランチオキトリウム」の沖縄株=筑波大提供

 藻類に「石油」を作らせる研究で、筑波大のチームが従来より10倍以上も油の生産能力が高いタイプを沖縄の海で発見した。チームは工業利用に向けて特許を申請している。将来は燃料油としての利用が期待され、資源小国の日本にとって朗報となりそうだ。茨城県で開かれた国際会議で14日に発表した。

 筑波大の渡邉信教授、彼谷邦光特任教授らの研究チーム。海水や泥の中などにすむ「オーランチオキトリウム」という単細胞の藻類に注目し、東京湾やベトナムの海などで計150株を採った。これらの性質を調べたところ、沖縄の海で採れた株が極めて高い油の生産能力を持つことが分かった。

 球形で直径は5〜15マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。水中の有機物をもとに、化石燃料の重油に相当する炭化水素を作り、細胞内にため込む性質がある。同じ温度条件で培養すると、これまで有望だとされていた藻類のボトリオコッカスに比べて、10〜12倍の量の炭化水素を作ることが分かった。

 研究チームの試算では、深さ1メートルのプールで培養すれば面積1ヘクタールあたり年間約1万トン作り出せる。「国内の耕作放棄地などを利用して生産施設を約2万ヘクタールにすれば、日本の石油輸入量に匹敵する生産量になる」としている。

 炭化水素をつくる藻類は複数の種類が知られているが生産効率の低さが課題だった。

 渡邉教授は「大規模なプラントで大量培養すれば、自動車の燃料用に1リットル50円以下で供給できるようになるだろう」と話している。

 また、この藻類は水中の有機物を吸収して増殖するため、生活排水などを浄化しながら油を生産するプラントをつくる一石二鳥の構想もある。(山本智之)

「石油」を造る藻類を日本で発見



以下は  記事 : 再掲:「藻」からのガソリン精製が成功した   からの引用です
08年07月09日(水)
藻から軽油を量産へ デンソー、年80トン計画
朝日新聞 2008年7月9日

この朝日新聞の記事に出てきているのが、日本で石油代替製品産出にむけて研究が進められている事を紹介した「軽油産生微細藻、シュードコリシスチス・エリプソイディア(Pseudochoricystis ellipsoidea)(仮名)」です。

藻そのものについての解説は、この記事中でリンクしているWIRED VISIONの記事が当事者へのインタビューを含むお奨め記事です。

石油代替を狙った液体燃料は、自動車を動かす事を目的にしているものが多い様です。もちろん安定性から言えば「電気」が一番ですが、既に大量に存在している「液体燃料によって走る自動車」、「液体燃料を補給するためのステーション」などのインフラ部分も含めて考えると、液体が手っ取り早いという事はあるのだと思います。

この記事で語られているのは「ガソリンを作り出す藻」ですが、今後の自動車燃料の主力がガソリンになるのか、軽油になるのか、バイオエタノールになるのか、または水素などによる電力という事になるのか … 今後の競争次第という事になるのでしょう。予断を許さない状況ですが、「車中心のライフスタイル」を見直す、という方向性も存在している事を忘れると危険です。


この記事は2008年5月30日に掲載されたものです
Sapphire Energy unveils world’s first renewable gasoline
press releases May 28, 2008

「藻」から再生可能ガソリンを精製する技術が登場
ITmedia News 2008年05月30日

Sapphire Energyという米国の企業が、藻からガソリンを精製する新技術についての発表を行っています。プレスリリースを要約します。
Sapphire Energyは、日光、二酸化炭素、藻(光合成微生物)を利用して原油を作り出し、オクタン価91というガソリン(レギュラー・ガソリンに相当する)を実際に精製しました。

そのプロセスによって作り出される最終製品は、エタノールやバイオ・ディーゼルでは無く、化学的にガソリンと同じものである高品質の炭化水素です。それは現在のエネルギー・インフラに完全に合致します。車も精製所もパイプラインも置きかえる必用は無いのです。

農地を使用して作物から燃料を作り出す、というのは効率が悪くコストも高いものになります。なおかつそれは、『食糧か燃料か』というやっかいな問題を持ち出すのです。

私達が開発したプロセスは、貴重な農地も食用作物も必用としません。水の利用という側面から見ても非常に効率的なのです。必用とするのは太陽、二酸化炭素、そして水です。水は汚水で大丈夫ですし、タンクは耕作に適さない荒れ地に設置可能です。

生産される「オイル」は国産です。現在米国は2000億ドル以上のお金を外国産の油を輸入するために費やしています。そして、石油価格は毎週最高価格を更新しています。この技術が実用化されれば、2000億ドル以上のお金が、米国の国内に留まり、国内で新たな産業に携わる人々に収入をもたらす事になるのです。

一番大きいのは、「現在持っているものがそのまま使えます
原油精製設備、パイプライン、そして何より膨大な自動車
米国人が「自動車」を手放す事は有り得ない、という話なのですね …

「オイル」生産の為には、藻を培養する為のタンクが必用ですが、タンクを設置する場所は「作物の為の」耕地でなくてかまいません。また食用の農作物ではありませんので、「食糧か燃料か」という話にもなりません。

国内生産品になりますので、「産油国にお金を吸い取られる」状況も回避できるという事が強調されています。お金は「米国の産業が獲得し、米国の人達に新たな仕事がもたらされる」というのも、アピールポイントの様です。

価格が引き合う為には、スケールメリットが出るだけの「藻」タンクの設置が必用ですが、既にベンチャーキャピタルのVenrockが出資しています。


参考資料として、日本での石油代替製品の話を出しておきます

オイルを作る藻が、日本を救う?
WIRED VISION 2007年11月16日
軽油産生微細藻、シュードコリシスチス・エリプソイディア(Pseudochoricystis ellipsoidea)(仮名)という新属、新種の緑色単細胞植物

軽油産生微細藻は、名前の通り、軽油成分を細胞内に蓄える性質を持っている
世界各国で、脱石油競争が始まっていますが、日本の問題は「民生部門」つまり家庭でのエネルギーの利用効率が非常に低いという部分にあります。エネルギーを作り出すよりも前に、エネルギーを無駄にしない為の「家屋の耐震補強(長期間使用する事が環境に優しい)と断熱化」が必用になるでしょう。穴あきバケツに水を貯めるのは無意味ですから。


オイルを作る藻が、日本を救う? 1/2

2007年11月16日

慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市、冨田勝所長)では、最先端のバイオテクノロジーを活用した環境技術の研究が進められている。研究の1つは、藻からオイルを作り、バイオ燃料にしようというもの。オイルを作る藻とは何なのか? そして、藻の生み出すオイルはどのようなインパクトを社会にもたらすのか? プロジェクトを立ち上げた伊藤卓朗研究員に、実験の詳細と将来のビジョンを語っていただいた。

オイルを作る不思議な藻

──オイルを作る微生物を使って、石油代替燃料を生み出すシステムを作ろうとされているとお聞きしました。そんな微生物がいたんですね。

伊藤卓朗博士(慶應義塾大学先端生命科学研究所 研究員)

この微生物は、軽油産生微細藻、シュードコリシスチス・エリプソイディア(Pseudochoricystis ellipsoidea)(仮名)という新属、新種の緑色単細胞植物です。海洋バイオテクノロジー研究所の藏野憲秀博士らが温泉地から発見しました。

軽油産生微細藻は、名前の通り、軽油成分を細胞内に蓄える性質を持っています。この軽油を生み出すメカニズムを明らかにし、培養条件を整えてやれば、石油代替燃料を生み出せるのではないか。そして、メカニズムを明らかにするため、この先端生命科学研究所のメタボローム解析技術を活用できるのではないか、そう考えました。

──メタボローム解析技術とは何でしょうか?

[拡大版を見る]

大腸菌の細胞内で起こっている代謝を図にしたもの(図はRoche Applied Scienceによる。クリックでデジタル版の公開サイトにジャンプ)。現在のバイオ分野では、実験やシミュレーションを繰り返して、こうした細胞のメカニズムを明らかにしていく

メタボローム解析技術を説明する前に、現在のバイオ分野で行われている研究手法について簡単にお話ししましょう。

現在のバイオ研究では、細胞内の代謝経路を明らかにしようという試みが盛んです。このためには、細胞内の代謝物質を網羅的に測定し、大量のデータを得ることが必要になります。そして、得られたデータを解釈するためには、コンピュータによる解析が欠かせません。取り組みの1つとして、コンピュータ上で細胞のメカニズムをシミュレーションして仮説を立て、それを実験にフィードバックして再度検証するといった手法も行われています。こうやってシミュレーションと実験を繰り返して、細胞内部がどのようなメカニズムになっているのか、遺伝子がどのような役割を果たしているのかを明らかにしていくのです。

そこで活躍するのが、先端生命科学研究所のメタボローム解析技術です。キャピラリー電気泳動-質量分析計(CE-MS)という装置に、細胞から取り出した代謝物質を入れて、高い電圧をかけます。物理化学的な性質の違いによって、各物質は動く速度が異なります。どのような質量の物質がどれくらいの速度で移動するかを調べることにより、サンプル中に含まれる物質の構成がわかるわけです。従来の手法では、一度にせいぜい数十程度の物質しか分析できませんでしたが、メタボローム解析技術によって数百、数千という物質の分析が可能になりました。細胞の代謝経路の解析を飛躍的に効率化できたのです。

私の研究では脂質の分析も必要になるため、新しい手法を開発し、100種類程度の脂質代謝物質を一度に分析できるようになりました。

複雑な代謝のメカニズムを視覚化する研究も進んでいる。図は、先端生命科学研究所で開発されたE-Cell 3D。代謝の時間的変化や物質の質量変化などを、3DCGアニメーションによって表現する

メタボローム解析で、オイルを生み出すメカニズムを解明する

──軽油産生微細藻の研究では、どのような実験を行っているのでしょう?

研究室内の水槽で、さまざまに培養条件を変化させるとどのように藻の生長や代謝が変化するかを実験しているところです。藻の細胞や培地から代謝物質を採取して、メタボローム解析をしています。オイルを作っている状態、作っていない状態を比較することで、オイルを生み出す仕組みが明らかになると考えています。

軽油産生微細藻は、光とCO2それに窒素栄養を取り込んで光合成を行います。窒素栄養を与えるのをやめると、藻はオイルをたくさん作り始めるんですよ。

──栄養を与えないと、オイルを作るのですか? 何だか逆のような気がします。

私も不思議に思いました。人間なら、栄養が豊富な時にため込み、栄養がなくなったら脂肪を代謝させて活動しますからね。

ところで、菜種油、大豆油など、植物の種子にはたくさんの油が含まれています。なぜかといえば、油はエネルギーに変換しやすいからのようです。植物が発芽する時、すぐにエネルギーを取り出して、生長することができます。

そこからの推測ですが、この軽油産生微細藻は、栄養がなくなって生存が脅かされると防衛反応としてオイルをため込み、休眠のような状態になるのではないでしょうか。そして、環境が改善されたら、ためたエネルギーを使うという戦略なのかもしれません。休眠から目覚めるといった急激な変化が起こる際には、大量のエネルギーを消費しますから。

──しかし、オイルをため込むにもエネルギーが必要ですよね。

そうです。それでは、光合成をしている時とオイルを作っている時で何が違うかというと、増殖にエネルギーを使うかどうかなんですね。光合成をしている時は、増殖にエネルギーを使い、とにかく増えまくります。一方、オイルを作る時は、増殖を抑え、自分自身だけを守ることに専念するようです。

ただし、これもあくまで仮説であって、今のところ証拠はありません。生物の行動を理由付けするには、状況証拠から固めていくしかありません。そして、科学的にわかったことから推測して、人間として理解できる物語を作るのです。

──では、まったく無駄な行動をしている生物もいるかもしれませんね。

そもそも生命活動には無駄な部分が多いですよ。代謝活動についても、AからZまで一直線に流れるシンプルなものだと、1ヶ所反応がうまく行かないだけで成り立たなくなってしまいます。常に冗長性を確保し、回り道、無駄を作り、いざという時にはそれらを使う。そうでないと生物は生き残れません。この一例については、私たちの研究所が世界で始めて科学的に証明しました

──実験の見通しについてはいかがでしょう?

先端生命科学研究所が開発し、特許を取得しているキャピラリー電気泳動-質量分析計(CE-MS)。こうした特許を事業化するため、同研究所からはヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社というベンチャー企業がスピンオフしている

オイルを作るためのメカニズムが解明できれば、さまざまな応用ができると思います。例えば、窒素栄養以外の変化でもオイルを作るかもしれません。遺伝子組み替えによって、オイルの量を増やせる可能性もあるでしょう。また、遺伝子組み換えを行わなくても、突然変異を利用するという手がありますね。メカニズムがわかれば、できることが一気に広がるのです。


オイルを作る藻が、日本を救う? 2/2

環境を破壊する、従来のバイオディーゼル

──藻が作ったオイルは、どのように利用されるのですか?

私は、藻から植物油のようなオイルを取り出そうと考えています。植物油として取り出せれば、その後は既存技術で燃料化することができるでしょう。

燃料化するには、植物油を脂肪酸メチルエステル(FAME)という物質に変換し、バイオディーゼルとして利用するという方法があります。もう1つ、植物油を水素化分解するという方法もあり、これを使えば軽油と同じ成分になります。日本国内の石油関連企業は、後者の方法を推進したがっているようです。

──藻から作った燃料は、既存のバイオ燃料と比較してどのようなメリットがあるのでしょう?

水槽で生育されている軽油産生微細藻、シュードコリシスチス・エリプソイディア

私の研究ではありませんが、一般的に、陸上植物である作物に比べて微細藻の収量は単位面積あたり年間で数十倍から数百倍になると言われています。

藻のメリットの前に、アブラヤシなどの高等植物(種子を作る植物)を使うことのデメリットについて述べようと思います。現在、アブラヤシから作られるパームオイルの生産量には余裕がありません。バイオ燃料として使うためにはアブラヤシを増産しなければならず、インドネシアを始めとした東南アジアの国々では、森や湿原を切り開いて新たな耕作地を開墾しています。CO2を削減するどころか、逆に増えてしまうという、本末転倒の事態が起こっています。そして、同様に菜種や大豆なども拡大できる作付け面積が限られており、すでに、私たちの身の回りでもこれらから取れる油を使った食品が値上げされ始めています。

また、日本や欧米などで行われている近代農業では、高等植物を育てるために大量の肥料を使います。そして、肥料を生産するために大量の化石燃料が消費されます。ほかにも農業機械、農薬、出荷に使う袋や箱などにも化石燃料が使われているのです。

コストを劇的に下げられる可能性が見えてきた

──藻の場合は、化石燃料の使用量が少なくなると。

はい。具体的な数字としてはまだ算出できませんが、1つ1つの事実を重ね合わせて考えると、藻から燃料を作るのは合理的だと考えられます。

藻は高等植物と違って、工場で生産できますから、台風や気温変化の影響をほとんど受けません。長期間にわたって安定供給が可能です。高等植物には肥えた土地が必要ですが、藻の工場なら砂漠化が進んだ土地も有効活用できるでしょう。藻は水中で生育できますから、光を与えて、水をうまく循環させればいいのです。

また、藻は高等植物に比べて単位面積あたりの収量が多いだけでなく、収穫や加工も効率化しやすいと思います。

──藻なら絞ったあとのゴミも少なくて済みそうですね。

ゴミは出ますが、将来的にはそれを活用することができるかもしれません。例えば、絞りかすから取り出した糖をアルコール発酵させ、バイオエタノールに変換することもできるでしょう。細胞がリグニンで固く結びついている高等植物に比べて、単細胞の藻ならセルロースからもエタノール変換しやすいかもしれませんね。

──藻から取れるバイオディーゼルの成分は、その他のバイオディーゼルと同じものなのですか?

実証はまだしていませんが、今あるデータを見る限りでは同じものが取れると考えています。そうだとすれば、自動車燃料のほか、火力発電や船舶燃料にも使えるでしょう。石油から作るより、コストが安くなることもありえると思います。

──藻から安価なバイオ燃料が取り出せるようになったら、社会や経済にどのような影響を与えるでしょうか?

仮に10年でそれなりの量産化ができたとしても、バイオ燃料だけで社会が回せるほど甘くはありません。当面のところは、化石燃料にバイオ燃料を混合して使い、化石燃料の使用量を減らすという方向になるでしょう。それでも、日本国内で燃料の安定供給ができるようになる意味は大きいと思います。消費者の目にも見える形で、燃料供給を安定させたいですね。

研究者プロフィール

1998年3月、鶴岡工業高等専門学校物質工学科卒業。2001年3月、弘前大学農学部生物資源科学科卒業。2006年3月、東北大学大学院生命科学研究科において、生命科学博士号取得。2006年4月より慶應義塾大学先端生命科学研究所に所属。